『躁うつ病とつきあう(第3版)』読了
加藤忠史『躁うつ病とつきあう[第3版]』日本評論社(2013年)を読了しました。
概要
躁うつ病(双極性障害)の研究を第一線で行っている、加藤雅史先生*1の本です。
一般書。ソフトカバー(paperback)。全部で17章+付録。
各章は短いので読むにあたって苦になりません。1章から17章は、各章で異なった患者さんの症例を取り上げています。最後に付録があり、「躁うつ病とはなにか」という医学的知識(治療法や薬など)やその他の対処法についてフォローしています。(続きを読むというところに目次を記しておきました)
雑感
双極性障害について本の中では、初級に位置づけられます。
各章が短いのに加え、文体も柔らかいので読みやすかったです。
まず、双極性障害も精神病なんだなあと思わせる、はたから見るとおかしなエピソードがたくさんあります。この点、躁うつ病=双極性傷害Ⅰ型である*2と考えるとすると当然ながら、重症例が多くなっているように思えます。したがって、私をはじめ双極Ⅱ型の人には、他人事のようにさえ感じてしまう訳です。もしくは、読者の関心を惹くためにインパクトのある症例を選んでるのかなと思うかもしれません。
もっとも、意図的に抽出されたエピソードを掲載しているため、自分が当てはまると言える話は―病識がなければもちろんですが―むしろ少ないかもしれません。逆を言えば、Ⅰ型とⅡ型が別物であるという認識にさせてくれます。そこのところは専門書でないので、「こういう人もいるんだな」くらいの軽く読み飛ばす感覚でいいです。
そして、各章にはテーマがあり、滋賀医科大にお勤めのときのエピソードなどを、テーマに沿って説明しています。初心者の方は、読み物として読みつつ、テーマに関する最低限の知識を拾うのに有用でしょう。病気について知ろうとしている方には物足りない仕上がりですが、本書の趣旨は、症例を通じてその症状を知り、双極性障害とつきあうのがいかに困難かということを考え、理解し、つきあう方法を模索する一材料となることだと思います。このことは、家族や職場の上司が登場する章があることからも伺えるでしょう。
まだ発展途上な躁うつ病の治療(執筆当時は言うまでも無い)に対して、加藤先生が懸命に試行錯誤していて、人柄が伝わってきましたし、現場における医者から見た視点を少し共有してくれる、そんな本でした。